白亜紀前期に起きた地球史上最大規模の火山噴火が111.6万年間におよぶ海洋の無酸素化と海洋生物の大量絶滅を引き起こした

白亜紀前期、地球規模の急激な温暖化の進行と海洋における無酸素水塊の拡大により、海洋生物の多くが絶滅しました。海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event 1a、以下、OAE1a)と呼ばれるこの大事変についてはヨーロッパや大西洋周辺地域の地層で盛んに研究されてきました。しかし、OAE1aが生起し持続した正確な年代は不明でした。

当専攻の髙嶋礼詩教授、米国ウィスコンシン大学のBradley S. Singer教授らの研究グループは、OAE1aの詳細な年代を明らかにしました。研究グループは、北海道芦別市の芦別岳北西に露出する地層(蝦夷層群)からOAE1a時期に堆積した地層を見出し、そこに数多くの火山灰層が挟まることを発見しました。これらの火山灰層からジルコンを抽出し、U-Pb放射年代測定法で年代を測定した結果、OAE1aは1億1955万年前に発生し、その後111.6万年間、海洋の広い範囲で無酸素環境が持続したことが判明しました。また、蝦夷層群のOAE1aの地層の最上部から、年代の対比に有効な示準化石である浮遊性有孔虫化石を発見しました。この化石種は、白亜紀最大の海底火山体である「オントンジャワ海台」の上に重なる石灰岩からも報告されていることから、オントンジャワ海台の噴火とOAE1aの発生がほぼ同時であることが明らかになりました。今回、年代測定と同時に行った蝦夷層群のオスミウム同位体比の検討からも、OAE1aの開始時に大規模な火成活動の影響が示唆されることから、オントンジャワ海台の噴火がOAE1aを引き起こしたことが実証されました。

本成果は2024年11月21日日本時間4時に、学術誌Science Advancesに掲載されました。

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