2025年度 青葉理学振興会賞各賞

2025度 青葉理学振興会賞各賞の受賞者が決定しました。

この賞は、優れた研究業績、学業成績を収めた学部生または大学院生に授与されるものです。
各賞の授与式は、3月9日、多目的室にて執り行われました。

当専攻からは以下の4名の学生が受賞しました。

青葉理学振興会奨励賞(3年次学部生)
 ・加藤 千春(地圏環境科学科)
 ・青天目 啓(地圏環境科学科)

青葉理学振興会賞
 ・横山 裕晃(地学専攻・博士課程後期3年)

黒田チカ賞
 ・古川 美穂(地学専攻・博士課程後期3年)

小惑星リュウグウ試料の磁気測定から探る初期太陽系の磁場環境

東京理科大学 理学部第一部 物理学科の佐藤 雅彦准教授、北海道大学の木村 勇気教授、岡山理科大学の畠山 唯達教授、本専攻の中村 智樹教授、名古屋大学の渡邊 誠一郎教授を中心とする共同研究グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」によって地球へ持ち帰られた小惑星リュウグウの微小試料に対して高感度な磁気測定を行い、太陽系形成初期における磁場環境に関する新たな知見を得ました。

本研究では、研究グループが開発した高感度SQUID磁力計を用いた微小試料測定技術により、サブミリメートルサイズのリュウグウ試料約30個を系統的に分析することに成功しました。
その結果、これまで研究グループごとに異なっていた解釈を統合的に理解するための十分な磁気データが得られ、リュウグウ母天体が太陽系形成後およそ300万〜700万年に経験した水質変成時の外部磁場環境を記録している可能性が強く示唆されました。

本成果は、太陽系初期の物質進化や惑星形成環境を理解する上で重要な手がかりを与えるものです。

本研究成果は、2026年2月10日に国際学術誌「Journal of Geophysical Research: Planets」にオンライン掲載されました。

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海洋下のマントルに由来する岩石中に有機物を発見 ―上部マントル中での生物が関与しない有機物合成の証拠―

京都大学大学院理学研究科 三津川到 博士課程学生、三宅亮 同教授、伊神洋平 同准教授を中心とし、京都大学、広島大学、立命館大学、東北大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、早稲田大学、東京大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のメンバーで構成される共同研究チームは、南太平洋タヒチ島で採取されたマントル捕獲岩中の包有物から、多環芳香族炭化水素を主体とする有機物を発見しました。地球のマントル内部で生物とは無関係に有機物が合成されている可能性は古くから指摘されてきましたが、海洋下のマントルに由来する天然のマントル物質からそのような有機物を検出した例は極めて限られていました。

本研究では、放射光X線CTや顕微ラマン分光法などの分析手法を用いて、マントル捕獲岩中の微小な包有物を解析しました。その結果、包有物内に多環芳香族炭化水素を主体とする有機物が、二酸化炭素や一酸化炭素とともに分布していることを明らかにしました。

本成果は、生物が関与しない有機物合成が、海洋下のマントルでも起こり得ることを示すものであり、マントル内における有機物合成過程の全容解明に向けた重要な手掛かりとなることが期待されます。

本研究成果は、2026年1月14日午前10時(英国時間)に英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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ガラスはなぜゆれて、なぜこわれ始める?―分子のゆれから降伏まで、ひとつの理論でつなぐ―

ガラスは、建材や光学部品、電子デバイスなどに広く使われている重要な材料ですが、その性質には未解明な点が多く残されています。中でも、ガラスをつくる分子特有の「ゆれ(分子振動)」と、ガラスにかける力を強くしていくとあるところで急にこわれ始める「降伏」は、多くのガラスに共通して現れる性質として注目されています。
これまで、どちらか一方なら説明できる考え方はありましたが、両方を一つの見方でまとめて説明することは難しいままでした。

本専攻の須田誠大学院生らは、これまでガラスの分子振動を説明するために使われてきた理論モデルに着目し、このモデルに力を加えると、降伏が起こることを示しました。

今回の成果は、ガラスの分子レベルの「ゆれ」と、「こわれ始め方」のつながりを考える手がかりになります。
ガラスという物質状態の理解を深めるだけでなく、将来的にはガラス材料の設計や耐久性評価をより効率よく進めるための基礎になると期待されます。

本成果は2025年12月18日付で学術誌Physical Review Lettersに掲載されました。

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機能性流体を用いた誘発地震抑制技術の開発に成功―地震を起こす断層滑りにブレーキをかける地震抑制技術の黎明―

様々な地下開発では、地下に流体を注入する際に断層の応力状態が変化し、微小地震が発生しますが、時に被害を伴う誘発有感地震が発生してしまうことがありました。
これまで、注入する流体の量を減らすなどの対策が試みられてきましたが、経済性や技術的な制約があり、抜本的な解決策は見つかっていませんでした。

東北大学流体科学研究所の椋平祐輔准教授、Lu Wang氏(研究当時:流体科学研究所 特任助教)、大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターの矢部康男准教授、本専攻の澤燦道助教、武藤潤教授の研究グループはせん断増粘流体(STF)を、断層を模擬した粉末に付与し、その摩擦特性を実験的に調べました。
その結果、STFを用いると断層の摩擦特性が変化し、断層滑りを安定化させ、地震の発生を抑制できる可能性を示しました。

今回の成果は、STFを使ってより安全な地下資源開発を実現できる他、将来的に地震の抑制技術開発の第一歩となる可能性もあります。

本研究成果は、2025年12月19日付で、米国地球惑星連合の国際学術誌Geophysical Research Lettersに掲載されました。

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本専攻 古川善博准教授らNASA OSIRIS-RExによる研究がTop 10 Breakthroughs of the Year in physics for 2025に選出

本専攻 古川善博准教授が所属するNASAのOSIRIS-RExチームの研究「小惑星から生命材料の発見」が、Physics World誌 Top 10 Breakthroughs of the Year in physics for 2025に選出されました。

Top 10 Breakthroughs of the Year in physics for 2025とは、知識または理解の著しい進歩、科学的進歩または実社会への応用開発における研究の重要性、読者に対する一般的な興味の観点から、最も重要と考えられる10件が英国物理学会Physics World誌によって選ばれます。

Top 10 Breakthroughs of the Year in physics for 2025 revealed

原始地球を模擬した実験でRNAを構築する一連の化学反応を実現:ホウ酸と脱水リン酸が豊富な海岸で原始RNAが誕生か

RNAはDNAを基にタンパク質を作り出す際に遺伝情報を伝える分子ですが、最初の生命ではDNAとタンパク質の両方の役割を果たし生命誕生に不可欠な分子であったと考えられています。
しかし、RNAの材料分子からRNAを構築する化学反応がどこでどのように起こったのかは明らかになっていませんでした。

本専攻の平川祐太 大学院生(研究当時、現・海洋研究開発機構ポストドクトラル研究員)、米国応用分子財団のSteven A. Benner博士、本専攻の古川善博 准教授らは、RNAの構成要素であるリボースと核酸塩基をホウ酸、アミドリン酸、火山ガラスの存在下で反応させると、リボースリン酸、リボヌクレオチドを経てオリゴヌクレオチドが生成する反応が効率よく進行することを明らかにしました。
この結果は、RNAへの化学進化につながる一連の反応はホウ酸が豊富な蒸発環境で進行したことを示唆するもので、生命誕生に不可欠とされるRNA生成の謎を解く糸口となる可能性があります。

本成果は、日本時間2025年12月16日(火)午前5時公開の科学誌米国アカデミー紀要に掲載されました。

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氷期の南太平洋熱帯域の水温と塩分を定量復元〜IODP第310次航海で掘削されたタヒチ島サンゴ化石からの証拠〜

本専攻の浅海竜司准教授、ブレーメン大学のThomas Felis博士、琉球大学の新城竜一教授、高知大学の村山雅史教授、東北大学・海洋研究開発機構変動海洋エコシステム高等研究所の井龍康文教授の研究チームによる研究結果が、「Climate of the Past」誌(オープンアクセス)の2025年12月号に掲載されました。

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桜島火山直下でのマグマ結晶化速度を解明:噴火活動の新たな予測方法を提案

本専攻の博士前期課程学生Aulia Syafitriさん(現インドネシア火山学・地質災害軽減センター)、中村美千彦教授らの研究チームは、京都大学防災研究所との共同研究で、桜島火山の火道浅部まで上昇したマグマの結晶化速度とそれによる粘性上昇速度を明らかにしました。

今回、研究チームは、1976年5月に桜島南岳で発生した一連の噴火の噴出物を詳細に解析しました。その結果、マグマ中の液部分(石基)に含まれる結晶の数・大きさ・占める体積の割合が、徐々に増加していたこと、また結晶の成長速度は、マグマ中のシリコン(Si)の拡散速度で律速されていることを確かめました。
マグマの温度や化学組成の違いによるSiの拡散速度の差を補正した上で、これまでの室内実験と比較すると、既存の結晶の成長速度については、桜島のケースに近い実効過冷却度で行われた従来の実験結果と概ね一致することを突き止めました。
一方、結晶が新たに生まれる核形成の速度は、マグマが地表近く(圧力40 MPa以下)まで上昇してくると、室内実験より少なくとも約80倍速くなり、その結果、マグマの結晶化速度も加速することがわかりました。さらに、火道浅部のマグマの粘性はこの減圧結晶作用によって上昇し、爆発的な噴火を発生し得る閾値に達していたことがわかりました。

今回の研究により、桜島の地下でマグマがいつ、どの浅さまで上昇してきたかを、山体膨張などの観測によって捉えられれば、地下でのマグマ粘性の上昇をほぼリアルタイムに予測し、噴火の発生や噴火様式の予測ができるようになる可能性があります。

本研究の成果は、2025年11月11日にJournal of Volcanology and Geothermal Research誌にオンライン公開されました。

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