東アジア・北西太平洋域で初 白亜紀末の小惑星衝突を示す「K/Pg境界層」の一部を北海道で発見

約6600万年前の白亜紀末、メキシコ・ユカタン半島近傍に小惑星が衝突し、巨大津波、広域におよぶ森林火災、急激な寒冷化が発生し、多くの生物が絶滅しました。
この時代の境界は「白亜紀/古第三紀境界(K/Pg境界)」と呼ばれています。
東アジア・北西太平洋域は、衝突地点から最も遠い地域の一つであり、地球規模で起こった環境変動の影響を検証するうえで極めて重要な地域です。

東北大学・東京大学らの研究グループは、従来K/Pg境界層とされてきた北海道浦幌町茂川流布(もかわるっぷ)川セクションの露頭はK/Pg境界層ではなく、北東約4kmに位置する川流布(かわるっぷ)川支流上流の泥岩層における地層が、K/Pg境界層の一部であることをオスミウム同位体比分析、微化石分析、火山灰の放射年代測定、古地磁気分析の結果から示しました。
本地層により100年単位という高い解像度で堆積当時の環境変動を解析できる可能性があり、本成果は北西太平洋や東アジア地域における白亜紀末の環境や生態系の変化を解明するための重要な基盤となることが期待されます。

本成果は2026年5月19日18時(日本時間)、科学誌Communications Earth & Environmentに掲載されました。

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地球の外核に大量の水素が存在する可能性 -世界初、液体鉄中の水素量をその場観察で直接決定-

地球の中心にある核は、主に鉄でできていますが、その密度は純粋な鉄よりも低いことが知られています。
これは、核の中に鉄より軽い元素が混ざっているためであり、その候補のひとつとして「水素」が考えられています。
これは、水素は宇宙に豊富に存在し、高圧下では鉄と結びつきやすい性質を持つためです。
地球の核にどれだけ水素が含まれているかを知ることは、地球の成り立ちを理解するうえで非常に重要です。

本専攻の高橋直生大学院生、坂巻竜也助教らの研究グループは、大強度陽子加速器施設J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の超高圧中性子回折装置「PLANET」を用いた中性子実験により、高温高圧下で液体鉄に溶け込む水素の量を世界で初めて直接的に決定することに成功しました。
本研究は、地球の核がどのように形成され、どのような化学組成を持つのかという長年の謎に対し、新たな手法で強力な証拠を提供したものです。

本研究成果は、日本時間2026年5月11日18時に英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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活断層で究極の潤滑物質「酸化グラフェン」を世界で初めて発見 -跡津川断層系のゆっくりすべる謎を解明-

岐阜県から富山県にまたがる跡津川断層系では、地下7~8kmまで地震が少なく、断層がゆっくり滑るクリープが知られています。
こうした現象は、これまでグラファイトや流体の潤滑によるものと考えられてきました。
近年のラマン分光法やXPS、TEMの分析技術発達により、様々な種類の炭素が分類できるようになりました。
特にグラフェンは酸化還元により物性が大きく変化しますが、地学でその特異性は注目されてきませんでした。

本専攻の長濱裕幸 教授、武藤潤 教授、澤燦道 助教、島田知弥 大学院生、東北学院大学の中村教博 教授、東京大学の大藤弘明 教授らの研究グループは、活断層中に単層ナノシートの酸化グラフェンを発見しました。
酸化グラフェンはグラファイトよりも一桁小さい摩擦係数0.01以下の超低摩擦であるため、跡津川断層系の特異な地震活動に影響する可能性があります。

本成果は日本時間5月12日18時に科学誌Nature Communicationsに掲載されました。

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34億年前の海洋に生物的硫黄代謝の痕跡―太古の浅瀬は生命にとっての”硫黄のオアシス”だった?―

東京大学大気海洋研究所の笹木晃平特任研究員および高畑直人助教、千葉大学大学院理学研究院の石田章純准教授、本専攻の掛川武教授、名古屋大学大学院環境学研究科の杉谷健一郎教授らからなる研究チームは、約34億年前の岩石から地球史初期の生命が硫酸イオン(SO42-)を使って呼吸していた痕跡を見出しました。

本研究で調べたのは、岩石の中にある直径0.01mmより小さい同心円状の黄鉄鉱(FeS2) です。
最新の分析装置であるナノスケール二次イオン質量分析計(NanoSIMS)を用いて、この小さな黄鉄鉱組織の内部における硫黄同位体比(δ34S)の変動を、世界で初めて高精度に分析することに成功しました。
さらにその中の有機物(生物の材料となる炭素を含む物質)の分布や同位体比の特徴を調べると、この黄鉄鉱形成には硫酸で呼吸を行う微生物活動が関わったことが明らかになりました。
大気に酸素がほとんど存在しなかった当時、海では一般に主要な栄養源である硫酸イオンも極めて乏しかったと考えられてきました。
しかし本研究の分析結果は、太古代の浅瀬環境の一部では硫酸が比較的に多い場所があり、そこが初期生命にとっての「オアシス」になっていた可能性を示しています。

本研究成果は、太古代の生命がどんな環境で生き、どんな仕組みでエネルギーを得ていたのかを理解する手掛かりになります。
さらに、今後の地球の生命起源研究や古環境復元研究、地球外生命を探す研究にも役立つことが期待されます。

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2016年熊本地震の断層活動履歴を高精度に解明 ―トレンチ調査が明らかにした1.5万年の記録―

千葉大学大学院理学研究院の石村 大輔准教授、本専攻の高橋 直也助教、同志社大学理工学部の堤 浩之教授、九州大学大学院比較社会文化研究院の市原 季彦研究員らの研究チームは、2016年の熊本地震を発生させた活断層の活動履歴を高精度に明らかにするために、当時の地震で出現した地表地震断層(以下、地震断層)上での掘削調査(断層トレンチ調査)に取り組みました。

その結果、過去約15,000年間に最大で8回の活動があったことを解明しました。更に近年の活動時期については、200〜300年の範囲まで高精度に絞り込むことに成功したと同時に、地震前後の地形データの比較から、地震時の変位が複数の断層にどのように分配されるのかを明らかにしました。

今回の研究成果は、今後の地震発生メカニズムの理解や、将来の地震予測の精度向上に大きく貢献することが期待されます。

本研究成果は、2026年4月6日に、学術誌Seismicaでオンライン公開されました。

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小惑星ベヌー試料から核酸塩基と高濃度の尿素を検出 ~小惑星環境での化学プロセスの絞り込みに成功~

北海道大学低温科学研究所の大場康弘准教授、海洋研究開発機構の古賀俊貴ポストドクトラル研究員、高野淑識上席研究員、九州大学大学院理学研究院の奈良岡浩教授(研究当時)、本専攻の古川善博教授らが所属する国際研究グループは、アメリカNASA主導の小惑星探査計画「OSIRIS-REx」で炭素質B型小惑星(101955)ベヌー(Bennu)から持ち帰られた粒子から、地球生命に必須の核酸塩基全5種を含む、合計38種の窒素複素環化合物、及び高濃度の尿素の検出に成功しました。

小惑星サンプルリターン計画「OSIRIS-REx」では、炭素質小惑星ベヌーで採取した試料(計121.6グラム)の分析が順調に進んでおり、既報(Glavin et al. 2025, Nature Astronomy)では、アミノ酸や核酸塩基など多様な有機物組成の存在を明らかにしました。

今回、ともに遺伝子RNA、DNAの構成成分である糖化合物及び核酸塩基類の詳細分析用として、約600ミリグラムの試料が日本の研究グループに配分されました。
同一の試料からすでに、小惑星リターンサンプルでは初めてとなるリボースやグルコースなどの糖類が検出されています(Furukawa et al. 2026, Nature Geoscience)。
今回の含窒素化合物の分析では、核酸塩基全5種を含む窒素複素環化合物38種(前述既報では20種)、及びアミノ酸や核酸塩基の合成材料の一つとして知られる尿素が検出されました。
検出された窒素複素環化合物の種類はこれまでに分析されたどの地球外物質よりも多く、今回初めて検出された分子も含まれました。
尿素は窒素複素環化合物の合計より8倍以上多く、ベヌー試料中に存在する単一の含窒素化合物として、アンモニア、メチルアミンについで3番目に多いことが分かりました。
これは、検出された有機化合物が低温環境におけるアンモニア溶液中での反応で生成したという先行研究での知見を支持するとともに、小惑星ベヌー上での核酸塩基の生成過程として尿素を材料とした反応経路が支配的であったことを強く示唆します。
さらにリボースと核酸塩基が同一サンプル内に存在するという結果は、生命誕生前の小惑星環境でRNAの主成分の大半が生成可能であることを示し、それらが原始地球上に供給されていたことを強く期待させます。

なお、本研究成果は、日本時間2026年4月2日(木)公開のCommunications Chemistry誌(英科学誌Natureの姉妹紙)の特集号、「Prebiotic Chemistry」にオンライン掲載されました。

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2025年度 青葉理学振興会賞各賞

2025度 青葉理学振興会賞各賞の受賞者が決定しました。

この賞は、優れた研究業績、学業成績を収めた学部生または大学院生に授与されるものです。
各賞の授与式は、3月9日、多目的室にて執り行われました。

本専攻からは以下の4名の学生が受賞しました。

青葉理学振興会奨励賞(3年次学部生)
 ・加藤 千春(地圏環境科学科)
 ・青天目 啓(地圏環境科学科)

青葉理学振興会賞
 ・横山 裕晃(地学専攻・博士課程後期3年)

黒田チカ賞
 ・古川 美穂(地学専攻・博士課程後期3年)

小惑星リュウグウ試料の磁気測定から探る初期太陽系の磁場環境

東京理科大学 理学部第一部 物理学科の佐藤 雅彦准教授、北海道大学の木村 勇気教授、岡山理科大学の畠山 唯達教授、本専攻の中村 智樹教授、名古屋大学の渡邊 誠一郎教授を中心とする共同研究グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」によって地球へ持ち帰られた小惑星リュウグウの微小試料に対して高感度な磁気測定を行い、太陽系形成初期における磁場環境に関する新たな知見を得ました。

本研究では、研究グループが開発した高感度SQUID磁力計を用いた微小試料測定技術により、サブミリメートルサイズのリュウグウ試料約30個を系統的に分析することに成功しました。
その結果、これまで研究グループごとに異なっていた解釈を統合的に理解するための十分な磁気データが得られ、リュウグウ母天体が太陽系形成後およそ300万〜700万年に経験した水質変成時の外部磁場環境を記録している可能性が強く示唆されました。

本成果は、太陽系初期の物質進化や惑星形成環境を理解する上で重要な手がかりを与えるものです。

本研究成果は、2026年2月10日に国際学術誌「Journal of Geophysical Research: Planets」にオンライン掲載されました。

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海洋下のマントルに由来する岩石中に有機物を発見 ―上部マントル中での生物が関与しない有機物合成の証拠―

京都大学大学院理学研究科 三津川到 博士課程学生、三宅亮 同教授、伊神洋平 同准教授を中心とし、京都大学、広島大学、立命館大学、東北大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、早稲田大学、東京大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のメンバーで構成される共同研究チームは、南太平洋タヒチ島で採取されたマントル捕獲岩中の包有物から、多環芳香族炭化水素を主体とする有機物を発見しました。地球のマントル内部で生物とは無関係に有機物が合成されている可能性は古くから指摘されてきましたが、海洋下のマントルに由来する天然のマントル物質からそのような有機物を検出した例は極めて限られていました。

本研究では、放射光X線CTや顕微ラマン分光法などの分析手法を用いて、マントル捕獲岩中の微小な包有物を解析しました。その結果、包有物内に多環芳香族炭化水素を主体とする有機物が、二酸化炭素や一酸化炭素とともに分布していることを明らかにしました。

本成果は、生物が関与しない有機物合成が、海洋下のマントルでも起こり得ることを示すものであり、マントル内における有機物合成過程の全容解明に向けた重要な手掛かりとなることが期待されます。

本研究成果は、2026年1月14日午前10時(英国時間)に英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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