小惑星リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒い理由を解明!

 小惑星回収試料や隕石の反射スペクトルは、観測で得られる小惑星の反射スペクトルから小惑星の構成物質を特定するための手がかりとなります。 東北大学大学院理学研究科地学専攻の天野香菜大学院生(現、客員研究者)、中村智樹教授、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の松岡萌研究員、東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構・地球惑星科学専攻の橘省吾教授らの研究グループは、小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから回収した試料を地球大気と反応させないように工夫して反射スペクトルを測定しました。リュウグウ試料、リュウグウと同種の小惑星から飛来した隕石、および隕石を実験的に加熱した試料を比較し、隕石が地球大気の水や酸素と反応したことでその反射スペクトルが宇宙にあった状態よりも明るく変化したことを示しました。本成果を踏まえ、隕石の地上での変質によって反射スペクトルがどのように変化しうるかを考慮することで、観測によって小惑星の構成物質を特定する精度の向上が期待されます。

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小惑星リュウグウが宇宙と実験室で違って見えるのはなぜ?「宇宙風化」が水のしるしを隠す

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)地質調査総合センター 地質情報研究部門リモートセンシング研究グループ 松岡 萌 研究員・デジタルアーキテクチャ研究センター 地理空間サービス研究チーム 神山 徹 研究チーム長は、東北大学大学院理学研究科地学専攻 中村 智樹 教授、天野 香菜 学術振興会特別研究員(地学専攻・博士課程後期)、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という)物質科学研究センター 階層構造研究グループ 大澤 崇人 研究主幹、東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 橘 省吾 教授、九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門 奈良岡 浩 教授・岡崎 隆司 准教授などと共同で、小惑星探査機「はやぶさ2」[1]が小惑星リュウグウ[2]の表面を上空から観測したデータと、リュウグウで採取して持ち帰った(サンプルリターン)試料を地球大気にさらさずに測定したデータの直接比較を行いました。その結果、リュウグウ表面の観測データと、採取試料の測定データはよく一致する一方で、水の有無を知る鍵となるヒドロキシ基(-OH)による吸収に明らかな違いがあることがわかりました。

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放射光X線が地球核の化学組成を変える-新しい絶対圧力スケールを決定-

理化学研究所(理研)放射光科学研究センター物質ダイナミクス研究グループのアルフレッド・バロン グループディレクター、東北大学大学院理学研究科地学専攻の生田大穣特任研究員(研究当時)、大谷栄治名誉教授らの研究チームは、カールスルーエ工科大学量子材料科学研究所のロルフ・ハイト副所長との国際共同研究で、新たな絶対圧力スケール[1](状態方程式)を決定し、それに基づいて、地球の核の化学組成に変更を迫る成果を発表しました。本研究成果は、太陽系外惑星の内部構造だけでなく、数百万気圧の高圧下における、物理学、化学、材料科学に関連するあらゆる物質の振る舞いに再評価を迫る重要な結果です。

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本専攻の学生5名が日本地球惑星科学連合2023年大会で学生優秀発表賞を受賞しました

本専攻の下記学生5名が日本地球惑星科学連合2023年大会において学生優秀発表賞を受賞しました。
受賞者と発表タイトルは以下のとおりです。

増田 英敏 さん(博士課程前期2年)
「津波堆積物の広域分布を用いたすべり分布逆推定の数値実験」

南舘 健太 さん(博士課程後期3年)
「津波,地震,台風の既往最大規模評価に向けた沿岸巨礫堆積物の活用」

佐藤 由人 さん(博士課程前期1年)
「常磐海岸における古津波履歴の解明」

渡辺 詩文 さん(博士課程前期1年)
「火山噴煙中での火山灰・ガス反応に伴う硫酸塩生成の数値計算と噴煙からの硫黄除去への応用」

飯島 颯大 さん(博士課程前期1年)
「カナダ・ガンフリント層(19億年前)ストロマトライト形成場の浅海熱水・シープ活動に関する地質学的,地球化学的研究」

小惑星リュウグウを作った原材料物質と太陽系外縁部の天体を構成する始原的な塵との分光学的関連性

リュウグウは、太陽系初期に形成された母天体がその後破壊され、その破片が再集積してできたC型(炭素質) 小惑星です。2020年、小惑星探査機「はやぶさ2」は地球に5.4 gのリュウグウ試料を持ち帰りました。リュウグウ試料の初期分析の結果、リュウグウ試料の大部分は、リュウグウの母天体を最初に構成していた始原的な無水物質と、液体の水が化学反応し形成された含水鉱物でできていることがわかりました。一方、いくつかの試料には、ほとんど水と反応をしていない岩片(極小変質岩片)があることも分かりました (Nakamura T. et al, 2022)。

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