量子ビーム地球科学グループ

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氏名専門分野Link
准教授鈴木 昭夫マグマの生成と性質、相転移、放射光🔗
助教坂巻 竜也高圧地球科学、放射光地球科学、高圧マグマ学🔗
※メールアドレスの末尾にtohoku.ac.jpを追加

超高圧高温実験から地球・惑星の内部構造や化学進化を解明

図1 地球内部の層構造

 我々の住んでいる地球の内部は高温かつ高圧の極限環境の世界です。このような極限条件では、例えば黒鉛がダイヤモンドに変わるように、地表の物質よりも密度が高くなるだけではなく、原子配列や電子状態の変化に起因した物理的・化学的な性質の変移が起こります。

 私たちの研究室では、高温高圧発生装置を駆使することで地球や他の惑星の内部の温度・圧力条件を実験的に再現することにより、直接観察することのできない天体内部が、どの様な物質で構成されていて、どんな性質を持ち、どの様に形成され、進化してきたかを調べています。

 46億年前、形成初期の地球表面はマグマの海で覆われていました。また、月の起源として最有力であるジャイアント・インパクトのように、地球の進化過程に影響を及ぼすイベントがあったと考えられています。このような状態から、現在の地球が形成されるまでの歴史を明らかにするためには、地球の深部条件でマグマがどの様に固まり、岩石と金属に分かれ、層構造が造られていったのかを調べることが重要です。そのため初期地球を造っていたと考えられる物質を高圧力下で融解させることにより、地球の進化過程を調べています。これらの手法は他の地球型惑星の進化にも適用できます。

 現在の地球の内部構造は層構造をしていることが地震波の観測から分かっています(図1)。中心部は核と呼ばれ、鉄を主成分とする金属からできています。その核の周囲は岩石から成るマントルがあり、表面は薄い地殻で覆われています。それぞれの層の構成要素が大きく異なるため、それぞれの層境界において物理的・化学的性質が不連続になっています。

 垂直方向の不連続だけではなく、水平方向の不均質も観測されています(図2)。このような地球内部の不連続・不均質には、地球の中に存在している物質の性質や種類、組み合わせの変化が反映されています。そして、沈み込むプレートやマントル最下部からの上昇流などの地球内部の大規模循環が深く関与していると考えられています。

 時間的(形成初期から現在まで)、空間的(地表から中心まで)に幅広く地球の全体像を明らかにするため、私たちはマルチアンビル型高圧発生装置(図3)や、数百万気圧もの高い圧力発生が可能なダイヤモンドアンビル高圧発生装置を用いて実験を行っています。特に、放射光X線や中性子ビームといった量子ビームを利用できる実験施設へ赴き、高温高圧状態の物質のその場観察実験に注力することで、地球内部に関わる様々な問題に取り組んでいます。

図2 模式的な地球内部構造
図3 研究室に設置されている高圧発生装置