] 断層・地殻力学グループ | 研究グループ一覧 | 東北大学 理学部 地球科学系 東北大学大学院 理学研究科 地学専攻

研究グループ一覧

断層・地殻力学グループ

教授 長濱 裕幸 岩石破壊力学、地球連続体力学、地震予測
教授 中村 教博
(高度教養教育・学生支援機構)
地球惑星磁気学、磁場、隕石
准教授 武藤 潤 構造地質学、実験岩石力学

我々は地震や岩石の変形に関する研究をしています。

地震や地殻変動は、エネルギーが保存しない非平衡なシステムで起こる地球の複雑な変形活動です。我々は、数理物理的理論や室内岩石実験および野外地質調査などを有機的に組み合わせることで、観察手法や観察スケールを超えた地球の変形活動の包括的な理解を目指しています。

断層を求めて


図1:野島断層中に発達する流動部分(上)と磁気異常(下)。赤い部分が断層の摩擦溶融を示唆する磁気異常(Fukuzawa et al., 2017を改変)。

図2:NZアルパイン断層の露頭写真。太平洋プレートとオーストラリアプレートが接している。岡田知己准教授(東北大学、左)とRick Sibson博士(オタゴ大学名誉教授、右)とともに。

地震はどのようにして発生し、停止するのでしょうか?

地震波は豊富な情報源ですが、深いボーリングで地震断層を掘り抜いたり、地表に露出する過去の断層の岩石から地下深部での性質を調べることもできます。1995年の兵庫県南部地震を起こした野島断層の電子顕微鏡観察から、地震の際に断層面が摩擦熱で溶融してしまったことが明らかになりました(図1)。日本には活断層が多く存在していますが、実際に地震を起こした地下深部の断層が地表に露出しているところは多くありません。そのため、断層を見るために世界中を飛び回っています。図2は、ニュージーランド南島にあるアルパイン断層の露頭です。ここは、陸の上で、太平洋プレート(左側の緑色岩体)とオーストラリアプレート(右側の茶色岩体)が接している非常に珍しい場所です。断層の両側ではプレートの衝突によるとてつもない力で両側の岩石が著しく変形しています。

断層運動を再現する


図3:実験でできたミニ断層の写真

様々な岩石変形試験機を組み合わせ、地下で岩石がどのように変形しているかを調べています。プレートの沈み込みによって、日本列島は10-14/sというひずみ速度で変形しています。これは、1 km離れた2地点が1年間で0.3 mmだけ近づくという非常にゆっくりとした変です。このようなゆっくりとした変形では、硬い岩石も飴のようにゆっくりと流動することがわかっています。図3は地下深くで起こる岩石の流動を再現できる試験機を用いて作成した、マグニチュード -4のミニ断層です。この断層に水を加えることで、水が存在しない場合に比べて、断層の強度が1/10〜1/100に低下することが明らかになりました。

一方、地震が発生する際には、岩石がひずみ速度1000/sを超えるものすごい速さで変形することが知られています。このように速いひずみ速度では、なんと岩石は一瞬で粉々に粉砕してしまいます(動画)。このような粉砕試料の形状や粒径分布を天然の断層岩と比較することで、地震時のひずみ速度やエネルギー散逸(消費)過程を調べています。


動画:高速で粉砕する岩石実験

地震を予測


図4:地下からのラドンガス散逸を示すイメージ図。大気中のラドン濃度は、地震前後に発生する岩盤の亀裂(割れ目)を通って、ラドン(222Rn)を含むガスが地上に散逸し、放射線管理(RI)施設で計測される。

地震の起こる時期や規模を正確に知ることは困難です。しかし、これまでの研究から、大地震には様々な異常が伴われることが明らかになってきました。その一つが、ラドンなどの放射性物質の異常があります。1995年阪神大震災の前には、震源から20 km離れた神戸薬科大学の放射線(RI)施設で測定された大気中のラドン濃度が増加したことが明らかになりました。同様な変動は2003年十勝沖地震や2011年東北地方太平洋沖地震前にも現れています。そこで、計算機を使って、これらのラドン濃度の変動が地震活動と統計的に関係しているかどうかを調べてみると、ラドン濃度の変動はある地域での地震の積算モーメント(地震のエネルギー)に強く関係していることがわかりました。このことは、大地震の前に、岩盤に微細な亀裂(割れ目)が発生することで、地中からのラドン散逸が増加し、大気中のラドン濃度が増加する可能性が明らかになりました(図4)。現在、断層・地殻力学グループでは、全国の放射線管理施設とともに大気中ラドンモニタリングのネットワークの構築を進め、データ駆動型の地震活動予測に挑戦しています。

地震や断層の問題を難しくしている理由のひとつは、地殻が均質ではなく、多くの欠陥を含んでいるからです。これを乗り越えるため、Yang-Mills場に類似した新しいゲージ場理論的連続体力学による重力・電磁場をモデル化する研究も行っています。地震に伴う電磁気的現象の研究は、断層岩の磁性の研究を通して、隕石衝突時のプラズマ磁場生成、原始太陽系星雲の磁場の研究といった惑星科学の現象解明にも発展しています。研究とは思いがけない発展をするものですね。