研究グループ一覧

古環境変動学グループ

教授 井龍 康文 古海洋環境変動、サンゴ礁
教授 西 弘嗣
(総合学術博物館)
微古生物学、古海洋学、層序学
准教授 髙嶋 礼詩
(総合学術博物館)
地質学、層序学
助教 鈴木 紀毅 微古生物学、海洋プランクトン
助教 山田 努 同位体地球化学、炭酸塩地球化学、石洵
助教 髙栁 栄子  
助教 黒柳 あずみ
(総合学術博物館)
微古生物学,古海洋学

IODP(統合国際深海掘削計画)で海洋環境変動史を解読する

地球表面の70%は海洋で占められています。現在の海洋性地殻は1億5千万年前以降に作られ、深海底の堆積層には地球環境変動が詳細に記録されています。この全記録を解読してしまおうとするのがIODP(統合国際深海掘削計画)の主要な目的のひとつです。そのため、最近日本が中心となり、全長210mの最新式深海掘削船『ちきゅう』を建造しました(『ちきゅう』については海洋開発研究機構JAMSTECのホームページをご覧ください)。地圏環境科学科はIODPの理事の一員であり、これまで以上に深海底掘削計画に貢献し、多くの研究成果を挙げようと意気込んでいます。

海洋には炭酸カルシウムの殻をもつ有孔虫やナンノプランクトン、珪質な殻をもった放散虫や珪藻などの単細胞生物が生息しています。それらの生物群集は水温・塩分・溶存酸素・栄養塩などの環境因子に敏感に反応して変化します。これら単細胞生物の化石(微化石)をフルに活用し、海洋環境変動史の復元や地質年代決定する研究は、地圏環境科学科の得意とするところで、海保教授・西教授・高嶋准教授・鈴木助教などが活躍しています。

酸素欠乏事変と海水温図1.海底に酸素が欠乏すると底生有孔虫のサイズが減少し、酸素欠乏事変は海水温の上昇と同期しています。これらの事変の直後に生物群集が多様化することが分かりました。

世界各地の深海底掘削試料を用いて海洋環境変動史を復元した研究成果の1例を紹介しましょう。有孔虫には海底に生息する種類(底生有孔虫)もいて、その群 集組成は海底環境に鋭敏に反応して変化します。海保教授らは深海底掘削試料に含まれる底生有孔虫化石を抽出し、解析しました。その結果、9300万年前と5500万年前に深海底が酸欠状態になり、有孔虫の大きさが減少すること、その後、急激に増大してゆくことを世界で初めてつきとめました(図1)。

過去と現在・未来を相補的に理解することも私たちの重要な戦略です。セディメントトラップ定点観測やプランクトンネットによって、太平洋の浮遊性有孔虫をはじめとするプランクトン群集組成を研究しています。最近、エルニーニョとラニーニャに対応したプランクトン群集の変化をみごとに捉えました(図2)。プランクトンの遺骸は深海底に降り積もるので、堆積物中の化石群集を解析することによって、海洋環境の変動を解読できます。

エルニーニョの時の生物生産量図2.エルニーニョの時の生物生産量は、水温が28℃以上の西太平洋暖水塊より東部の赤道湧昇域で高く、両水塊にはそれぞれ図に示したような特徴的な有孔虫の種が卓越することが分かりました。

バイカル湖を通して見る大陸域環境変動

バイカル湖底堆積物の解析結果図3.バイカル湖底堆積物の解析結果

海洋と大陸域の環境システムは相互にリンクしています。箕浦教授らは日・米・露・EUによる国際バイカル湖・フブスグル湖掘削計画を推進し、湖底堆積物から過去千二百万年間にわたるユーラシア大陸環境変動史の解明に取り組んでいます。バイカル湖底堆積物の解析結果(図3)から氷期・間氷期気候変動に対応した生物の一次生産量、集水域の地殻風化、タイガの消長が明瞭に読み取れます。

この他、環境変化と珪藻や貝形虫の群集変化や進化との関係にも取り組んでいます。さらに、不純物をほとんど含まないバイカル湖の水を利用し、宇宙の果てからやってくる超高エネルギーニュートリノをとらえ、地球中心核の物性と電磁気構造を解明することにも挑戦しています。海洋と大陸域の環境システムは相互にリンクしています。

南海の楽園サンゴ礁に高解像度環境史をみる

サンゴ骨格の炭素・酸素同位体比変化図4.過去20年間におけるサンゴ骨格の炭素・酸素同位体比変化および海水温変化.エルニーニョ・ラニーニャが明瞭に記録されている.

海洋環境が科学測器によって記録されはじめてから約60年、エルニーニョ・ラニーニャや「太平洋十~数十年変動」などの環境変動が見つかりました。 このような変動は準周期的なのか、カオスなのか、真の姿を知るには過去数百年にわたる高時間分解能の連続データが必要です。井龍教授・中森准教授・山田助教らは、サンゴ骨格やシャコガイの殻の成長輪の炭素・酸素同位体比を分析し、海水の温度・塩分と日照量を日変化から季節変化の精度で復元することに成功しました(図4)。この手法をサンゴ礁掘削によって得られた試料に適用し、過去数万年の環境変動を解明しようとしています。

このグループは「南海の楽園」沖縄諸島をメインフィールドとして、サンゴ礁の生態系と物質循環、第四紀気候変動とサンゴ礁の形成,炭酸塩岩のドロマイト化の研究を行っているほか、炭酸塩プラットフォーム堆積物から過去1億年の生物地球化学循環の復元にも挑戦しています。

サンゴ礁鹿児島県喜界島のサンゴ礁における調査風景。水温塩分センサーを設置しているところ。